提言


日系人プロジェクト

 世界には約380万人以上の日系人がいるとされています。

 日系人は自らのアイデンティティ を求めて先祖に興味を持ち、日本人のルーツを知りたいと思っています。しかし、その調査は言葉の壁と距離の壁にはばまれて大変に難しく、開始しても途中で断念する人、はじめから諦めている人が大勢いるのが現状です。

 そこで日系人のルーツ探求を支援する組織、または会社を設立したいと考えています。そのために必要な人材、資金を広く求めています。


日本の先祖調査にDNA検査を導入する試み

 アメリカはいま空前のルーツブームの中にあります。そのブームを支えているのはAncestry.com LLCなどの家系図企業によるDNA検査です。

 家族歴史の探求は長い間、文献や文書を調べる文字情報の世界で地道に行われてきました。文字情報には常に限界があり、多くの誤りもありました。人々はそれに気づいてはいましたが、その壁を打ち砕くことは非常に困難でした。それをいともたやすく可能にしたのがDNA検査の導入でした。


系図協会の設立

 アメリカには全米系図協会という会員数1万人以上の家族歴史愛好家の団体があり、活発に活動しています。イギリスにもSociety of Genealogistsというやはり1万人近い会員をもつ団体があります。欧米ではそのような団体が先祖調査の意義と面白さを広く宣伝し、オンライン学習を配信し、会員相互のコミュニティを運営しています。

 我が国にもこのような協会があれば、趣味として家族歴史を探求しようという人は着実に増えるでしょう。


故地ツーリズム

 ご先祖が住んでいた場所を「故地」といいます。そして、その故地を訪問する旅を故地ツーリズムといいます。故地ツーリズムに旅立つためには、まずは除籍を取り寄せてご先祖が住んでいた故地を知る必要があります。この除籍の取得をサポートし、故地ツーリズムの普及に協力してくれる企業を求めています。


系図証明基準

 現在作成されている家系図の大半は除籍に基づいて作成されていますが、はたして除籍という記録は全面的に信用できるものなのでしょうか。歴史学の研究に史料批判が欠かせないように、家系図にも信ぴょう性を確認する作業が必要です。アメリカには系図証明基準(Genealogical Proof Standard。略してGPS )というものがあり、企業が作製した家系図やネットにアップされている家系図は、この基準に基づいて信頼性を検証されています。我が国の家系図にも、このような基準が導入されることを強く望みます。


認定機関の設立

 アメリカでは質の高い先祖調査の研究活動を行っている人を専門家として認定する機関が二つあります。系図学者認定委員会(BCG)と専門家系学者認定国際委員会(ICAPGen)です。これらの機関で定めている認定のレベルは大変に高く、認定された人はプロフェッショナルとして裁判に専門家証人として出廷することも認められています。

 日本の家系図作成業者の知識レベルは玉石混交といわざるを得ません。一生に一度しか作らない家系図を知識の浅い業者に作ってもらうのは悲しいことです。しかし、我が国にはこのような業者の実力を客観的に測れる基準が無いため、広告だけで選択して作成を依頼している人も多いでしょう。

 我が国で家系図の代理制作を行っている業者のレベルを向上させることは、我が国の家系図レベル全体の底上げに通じることです。アメリカのような専門家認定を行う機関が一日も早く設立されることを強く望みます。