大正時代の珍姓さんノート

2019年06月11日


 大正時代に岐阜地方裁判所の検事正だった槇田燐二氏が集めた珍名、奇名のノートを入手しました。

 自序には、物故者は収録せず、ノートに記載した時点で生存している者のみを書いたとあることから、槇田氏が実際に会った珍名、奇名さんのみが載せられているものかと思いましたが、実際に二、三を確認してみると、当時の新聞などに掲載された誤報の珍名が含まれていることが分かりました。そのため玉石混交の感はいなめませんが、未公開のものでもあり、資料的な面白みは十分にあります。

 その中から一つ、ご紹介しましょう。


珍名 喜助  小樽市真栄町


 苗字が「ちんな」、名前が「きすけ」さん。2009年の電話帳で調べてみると、日本で3件しかなく、そのうち2件は小樽の家でした。この2件は親戚と思われるので、両家共通のご先祖かも知れません。この珍名に関しては実在していたと考えてよいようです。


 「ちんな」の由来は、「ちな(湿地)」の音声変化と推測されます。「ち」はイネ科の茅(ちがや)が生えている湿地帯のことで、「な」は土地を意味する古語のことでしょう。「ちな」が「ちんな」に変わり、それに珍名と当てたものか、「ちな」に珍名と当てて、「ちんな」という読みが生まれたか、どちらかでしょう。