高橋さんの苗字ツーリズム

2018年12月02日

 高橋さんは苗字ランキングの第3位。約142万人いる。

 その由来は地名である。古代の大和国に高橋邑(むら)があった。現在の奈良県天理市である。『日本書紀』の武烈即位前紀に「石の上 布留を過ぎて 薦枕 高橋過ぎ 物多に 大宅過ぎ 春日 春日を過ぎ 妻隠る 小佐保を過ぎ」と詠まれている。この地から発祥した安倍氏族の高橋氏は、天皇から大変に信頼され、その食事をととのえる膳(かしわで)を仰せつかった。この高橋さんの子孫も残っているかも知れない。

 このほかにも高橋という地名は全国に多い。その語源はいくつかあるが、1は高台の端にちなむ「たかはし」、2は川に架けるブリッジの「たかはし」、3は五穀豊穣などのため神様を天から招くとき、依り代にする高い柱にちなむ「たかはし」、4は天界と地上をつなぐ架け橋としての「たかはし」などである。3と4は非常に神様と縁が深く、2も単に渡河のためというよりは、川向こうの異界とつながることを意識しているので、3や4に近い。

 このような高橋地名から高橋さんは誕生した。高橋さんは竹や笠を家紋としてよく使うが、天に向かって真っすぐに伸びる竹は高い柱を意味している。その竹を大地に立てたのが笠である。このように高橋さんは、とにかく天界を強く意識した苗字ということができる。なお「はしご高」と言う髙を使っている家も多いが、これは江戸時代の筆字で書いた高が変化した異体字で、特段、高との違いはない。



 高橋さんの苗字ツーリズムとしては、次の場所がある。

 奈良市八条町の高橋神社。祭神の磐鹿六雁命 (いわかむつかりのみこと)は料理の神様。また栲幡千千姫命(たくはたちぢひめのみこと)は料理、 織物、安産、子宝の女神とされる。料理の神様を祀っているのは高橋氏がかつては天皇の料理番であったことにちなむ。この高橋神社はその昔、現在地よりも北に100mほど離れた場所に鎮座していたとされるが、「延喜式」神名帳に見える大和国添上郡の高橋神社だと考えられている。毎年5月には古式の包丁さばきを披露する「庖刀式」が催されている。


 次は奈良県天理市櫟本(いちいもと)町高品(たかしな)と高瀬川周辺。櫟本町を流れる高瀬川はかつては高橋川と呼ばれており、高品が実は古代の高橋邑の所在地だったともいわれている。「神祇志料」には「(高橋神社は)今八条村高橋にあり。按式社私考に八条村は後に祭りたる由土人いへり、一説に、今櫟本村に高階(高品)と云地名あり。是高橋なるべし」とあって、元々は高品に高橋神社があったという。


 最後は和歌山県和歌山市岩橋の高橋神社。高橋氏のなかには物部氏と同じく饒速日尊(にぎはやひのみこと)の 子孫という家がある。その氏神がこの神社である。「紀伊国神名帳」に「正一位高橋大神」と見える由緒のある神社で、江戸時代には近隣10か村の鎮守として崇められていた。岩橋の高橋、笛吹(ふえふき)両家が氏神として守ってきたが、別名を笛不吹(ふえふかず)明神と言い、境内で笛を吹くことが固く禁じられている。興味深い伝承を持つ神社である。