八釼さんの由来は三種の神器のひとつ草薙剣

2018年11月27日

 八釼、八剣と書いて「やつるぎ」と読ませる苗字があります。表記はほかにもありますが、八釼とは三種の神器のひとつ天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ ) のことです。

 その昔、天照大神(天皇家の祖神)の弟、素戔嗚尊(すさのおのみこと)が出雲国簸川 (ひのかわ。斐伊川 ) の上流に棲む八つの頭と尾を持つ化け物、八岐大蛇 (やまたのおろち) を退治したとき、化け物の尾っぽから宝剣が出てきました。それが天叢雲剣で、八岐大蛇にちなんで八剣(八釼)とも呼ばれました。

 その後、天皇家に献上され、12代景行天皇のとき、東国の征討に向かう皇子日本武尊はこの宝剣を佩刀し、火攻めに遭ったとき、この剣で草火を薙ぎ払い、反対に敵を焼き退けたことから草薙剣とも呼ばれるようになりました。以後はこの故事とともに、草薙剣の名で知られるようになりました。そして皇子の死後、尾張国の熱田神宮(愛知県名古屋市熱田区神宮)に安置されたのです。

 ところが、草薙剣は668年に盗み出されてしまいました。剣は海外へ持ち出される直前に取り戻され、無事に戻りましたが、このことを天皇に知られたくなかった熱田の神官たちは、急ぎ複製を作らせて熱田神宮ではなく、別宮の八剣宮を造営してそこに納めたと言われています。ただし、この話の真偽は定かではありませんが。


 

 いずれにしても全国に八剣(八釼)神社や八剣山があり、これらにちなんで苗字の八釼、八剣さんは生まれました。愛知県海部郡蟹江町の八剣社は八剣を祀った神社です。また、千葉県木更津の総鎮守八剱(やつるぎ)八幡神社も素戔嗚尊や日本武尊を祀る神社ですから、やはり草薙剣とゆかりが深い神社です。同社の神職も八釼姓を名乗りました。

 近畿地方の最高峰で、標高1,915 m を誇る奈良県吉野郡天川村の八剣山は、草薙剣ではなく、役行者(えんのぎょうじゃ)が『法華経(ほけきょう)』八巻を埋納したことから八経(はっきょう)ヶ岳と呼ばれ、転じて八剣山になったといわれていますが、そのひと際高く険しい山頂が、まるで八剣の切っ先のようだということから八剣山と呼ばれるようになったとも考えられます。

 正当な天皇の証とされた草薙剣にちなむ八釼、八剣さんは、その由緒をさかのぼると遥か遠く神話の世界から語らなければならない大変に歴史を持った苗字です。