ファミリーヒストリーの調べ方 『日本紳士録』
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日本を代表する紳士録といえば『日本紳士録』だろう。明治22年(1889)から平成19年(2007)まで、実に80版が出版された。戦前までは一定以上の所得税や営業税を支払っている人が掲載され、戦後は掲載されることが社会的なステータスとされたが、一方で紳士録商法と言われる詐欺の温床とも言われた。
『日本紳士録』の第41版は昭和12年(1936)に(財)交詢社から発行されている。収録されているのは、第三種所得税を50円以上、または営業収益税を70円以上納税している東京・大阪・京都・神奈川・兵庫・愛知・福岡・静岡・千葉・埼玉・新潟・宮城・石川・奈良・群馬・栃木・岡山・広島・山口・長崎・北海道に住む日本人と外国人である。
昭和12年の公務員の初任給は75円、ビールの大びん1本は37銭、ガソリンは1ℓが15銭、現代貨幣に換算すると1円は2,000円強というところだろうか。だとすれば、第三種所得税50円は10万円になる。現在の平均的な会社員(年収400万円台)の所得税は10万円ほどというから、この紳士録に掲載されている者は際立って上流階級というわけではない。とはいえ戦前は貧富の差が現在よりも大きかったと言われているので、おおむね『日本紳士録』に掲載されていれば、当時としては平均以上の暮らしをしていたことは間違いない。そして、ここに掲載されていることはやはり社会的なステータスだっただろう。
昭和12年(1936)の第41版には約18万7,000人が掲載されている。個々の情報は所属組合名、職業名、住所、第三種所得税額、営業収益税、電話番号と少ないが、収録人数が他の紳士録に比べて多く、ここに記載されていれば、『大衆人事録』や『人事興信録』にも載っている可能性が高い。
ご先祖が戦前に中流以上の暮らしをしていたかどうかを知りたいのなら、まずはこの紳士録を見るべきだろう。ただし、50円以上の所得税を納めている全員が記載されているわけではなく、地域も限られている点は注意が必要である。
ちなみに前年に226事件で重傷を負い、後に終戦内閣の総理大臣を務めた鈴木貫太郎は次のように記載されている。
鈴木 貫太郎
男爵、在郷海大将、枢密顧問官、麹町、三番、二ノ五官舎●二五七▲九33二二七五