認定機関の設立



 アメリカに有って日本に無いものに、系図の専門家を認定する機関があります。先祖調べが国民的な趣味になっているアメリカには、他人の先祖調査を代行したり、サポートする専門家をプロ認定する機関が二つあります。

 系図学者認定委員会(BCG)と専門家系学者認定国際委員会(ICAPGen)です。系図学者認定委員会は1964年に設立された非営利の団体であり、創立当初から系図学者の専門資格認定機関として機能してきました。現在は極めて高度な研究、分析、レポート作成スキルを持つ認定系図学者(CG)と先祖調査を正確かつ、効果的に講義できることを証明する認定家系講師(CGL)を認定しています。

 認定系図学者(CG) に認定されるためには、他人の家系図と研究報告書を系図証明基準に基づいて作成して委員会に提出し、厳正な審査を受けて合格しなければなりません。認定家系講師(CGL)の場合は50分以上の講義のデジタル録音、あるいはビデオを提出して審査を受けなければなりません。

 どちらも合格すると系図学者認定委員会(BCG)に登録している系図学者として氏名が公表され、自らも肩書として名乗ることができます。BCG では登録している系図学者に代理制作を依頼するように勧めていますが、面白いのは登録者と依頼者の間で紛争が起きた時、それを調停・仲裁するサービスをBCG があらかじめ用意していることです。これにより依頼者は、万が一、調査結果に不満があっても面倒な訴訟手続きを取ることなく、BCG を介して問題を解決できることが保証されているのです。

 専門家系学者認定国際委員会(ICAPGen)はユタ州ソレトレイクシティに本部を置く非営利団体で、こちらもすでに50年以上の歴史を持っています。

 現在、ICAPGenが 認定している認定系図学者(AG)はレベルが三段階に分かれ、さらにアメリカやカナダの州、イギリスの郡など特定の地域を選択して試験を受けることになります。BCG の認定系図学者(CG) が地域を指定しない系図学全般の専門家だとすれば、ICAPGen の認定系図学者(AG)はある地域のことに精通しているプロの研究者という違いがあります。

 レベル1に合格するためには、ある地域に住んでいた4世代の家系図とその研究レポートを提出して審査を受けなければなりません。このミッションを「4世代プロジェクト」といいますが、4世代の最新の先祖は提出した年から数えて80年以上前に生まれた人でなければならないという決まりが設けられています。審査では、系図に登場する人物を系図証明基準で立証しなければならないだけではなく、研究レポートの構成や誤字脱字なども厳しくチェックされます。

 ICAPGenは、このレベル1に挑戦する受験者の出願要件として以下のことを求めています。

  • 申請者は申請書を提出する前に、少なくとも1,000時間以上の系図研究、先祖調査の経験と教育を受けていること。
  • 申請者は上記の1,000時間の内、選択した地域の研究経験を500時間以上持っていること。
  • 申請者は選択した地域にある全国規模の記録について、少なくとも80時間の研究経験があること。


 この三条件をクリアした申請者の「四世代プロジェクト」は詳細に審査され、90点以上の採点を受けると合格になり、3年以内にレベル2の試験を受ける資格が与えられます。

 レベル2の試験はユタ州ソルトレイクシティにある家族歴史図書館で実施される筆記試験です。このテストはセクション1(2時間~)、セクション2(2時間~)からなり、セクション1では古い文書の翻訳、解釈などを行います。日本だと古文書の釈文と解説というところです。セクション2では一般的歴史知識と系図学の研究法が出題されます。この試験も90点以上で合格となります。合格後、3年以内にレベル3の試験を受ける資格が与えられます。

 レベル3も家族歴史図書館で実施され、筆記試験と口頭試問になっています。筆記試験では4時間以内に与えられた課題の家系について調査し、依頼者へ渡す調査計画書、家系図の作成、研究リポートをその場で作成することが求められます。情報は家族歴史図書館のデータを用い、試験中に書いたメモ用紙まで提出する決まりになっています。この過酷なミッションに90点以上で合格すると、最後の口頭試問を受ける資格が与えられます。この試験では選択した地域の認定系図学者数名から、約2時間にわたって専門的な知識を質問されます。これに90点以上で合格すると、晴れてICAPGenが 認定している認定系図学者(AG)の資格が与えられるのです。

 どちらの認定基準も極めて高度な知識、経験を問うものであり、この試験に合格した者は系図学者を名乗るにふさわしい専門家であることが証明されます。

 日本でICAPGenと同水準のテストを実施した場合、どれだけの系図作成業者が合格できるのかは分かりませんが、このような認定資格があれば、じょじょに有資格者でなければ業務を遂行することが難しくなるでしょぅから、我が国の系図作成業者のレベルが飛躍的に向上することは間違いないでしょう。また、系図学全体の活性化にもつながるはずです。

 私は、我が国にもこのような認定機関が設立されることを切望します。その考えに賛同して下さる系図愛好家、歴史家、系図作成業者の方がいらしたら、こちらからご連絡をください。まずは有志で設立準備会を立ち上げたいと思います。


系図学者認定委員会(BCG)

専門家系学者認定国際委員会(ICAPGen)