家系図と血系図


 系図には、一つの苗字のご先祖(直系尊属)をさかのぼって図にした「家系図」とある人の血の流れをさかのぼった「血系図」があります。

 通常、系図と言った場合は、「家系図」を指すのが一般的です。家系図は除籍を用いれば比較的簡単に江戸後期(180年)くらいまでは作ることができ、除籍に見える傍系(ご先祖の兄弟やいとこなど)も加えれば、数十人の人数になります。ただし、これはあくまでも苗字に基づいてさかのぼっているため、ご先祖のなかに養子がいる場合、それ以前のご先祖とは血縁関係が無いということもあります。婿養子であれば、妻方でつながりますが、養子、養女で婚姻した場合には、血は完全に入れ替わってしまいます。家制度が重要視され、血よりも家名を残すことが優先された戦前までは、養子に家を継がせることは珍しい事ではありませんでした。家系図を作るさいには、その点に注意が必要です。もしも、自分の身体に流れている血の源を知りたいのであれば、「血系図」を作る必要があります。


家系図
家系図

 次に家系図の線についてご説明しましょう。

 系図では、一(一本線。親子・婚姻線)、=(二重線。養子)、...(点線。続柄不明)を用いて人物と人物の関係を示します。従来の士業系系図 では、=(二重線)を夫婦の婚姻線として使用しますが、私の講座では使いません。=は養子にのみ用います。その理由は=を婚姻線とした場合、何度も再婚している事例を表現することが難しく、苦しまぎれに妻と妻を=で結び付けたり(これでは妻と妻が結婚したことになってしまいます)、系図上の慣例を無視して夫の左右に=を書き込むような表記が見られ、問題があるからです。私の講座では、数十年前からー(一本線)で凵字形を作り、婚姻関係を表記します。上記の家系図の婚姻部分の線をご覧ください。


 =を婚姻線に使用した場合、いくつかの問題点が発生します。

(例)後妻=先妻=夫

 これでは先妻と後妻が婚姻していることになってしまいます。

(例)後妻=夫=先妻

 上記を避けるため、先妻を向かって右側に書いた形ですが、これでは配偶者は向かって左に記入するという古くからの系図の慣例が守られず、全体として整合性の取れない系図が仕上がってしまいます。また後妻が2人以上いる場合は最初の例との複合形になることもあり、やはり見苦しい形になります。


 士業の婚姻線は誰が始めたものか、私は知りませんが、古くから遺産相続のさいに作成された相続人一覧図(事実証明の系図)が基になっていることは間違いありません。この相続人の関係を示す系図は、古くからある伝統としての家系図(観賞用家系図)とは明らかに別物であり、相続人一覧表の仕様で伝統の家系図を作成すること自体に無理があるのですが、現在の士業の作る家系図は線に無頓着で、前例に基づくいえばそういうことになりますし、他の士業の模倣といえばそういうことになります。いずれにしても系図は人と人を線を用いて図にしたものであるにも関わらず、その線にこだわらない姿勢は問題ではないかと思います。

 ちなみに私は30年以上前から、上記の凵字形婚姻線を用いて家系図を描き、受講生の方や系図の書き方を習いに来た方に教えてきました。私のほかに凵字形の婚姻線を用いた家系図を数十年も前から指導している研究者はいませんので、そういう系図を見かけたら直接、間接的に私の系図観に影響を受けている系図ということになります。


 家系図が血の流れを示すものではないため、私の血系図の作成をお勧めしています。血系図は両親で2人、祖父母で4人、曽祖父母で8人、高祖父母で16人と倍々で増えていきます。記憶だけでは、とてもそれだけのご先祖の名前や歿年月日を血系図に記入することは困難ですが、除籍を見れば、記入することができます。


血系図
血系図


 血系図を見ると、自分の知らないご先祖が大勢いることに気づくでしょう。そのなかには武士もいれば、商人もいれば、職人もいるかも知れません。実は我々は知らないだけなのです。除籍というすぐれた家系記録を利用すれば、血系図に記載されたご先祖やその姻族に、予想もしなかったような人物を見つけることもできるかも知れません。いずれにしても大切なことは、まずは血系図を作成して、自分の血の流れを整理し、それを理解することです。