家族歴史協働ネットワークのメンバー募集
世界最大の家系図企業であるAncestry.comは顧客の家族歴史探求を代行しています。調査にあたるGenealogist(欧米では調査員を系図学者と呼びます) のレベルと専門性は極めて高く、Ancestry.com は自社と契約しているGenealogist を雇うメリットを次のように挙げています。
1)家系図の情報を専門家の視点で解釈し、新しい道筋を提案することができます。
2)あなたが自力では発見できないような極めて専門的な情報を扱えます。
3)あなたの先祖が生きていた時代の歴史的背景を理解しています。
4)あなたの DNA の結果を使用して、遠縁の親戚を特定できます。
これらはAncestry.comが契約しているGenealogist に求めているレベルです。1は依頼者が行き詰った問題であっても、これまでの経験や歴史の知識から新たな洞察を行うことができる能力です。2は趣味のレベルではアクセスすることが難しい専門性の高い記録や情報の存在を熟知し、それらを調査することができる能力です。具体的にはオンラインでは入手できない一次資料と二次資料を含むアーカイブにすぐにアクセスできることが求められます。 3は家族歴史の物語性を重視する欧米のGenealogistには欠かせない知識です。Ancestry.comは歴史的出来事がご先祖に与えた影響について深く調べ、その結果が依頼者を喜ばすことをよく理解しています。そのためGenealogist には、我が国の学問分野でいうと日本史、地方史学、歴史人口学、農村社会学、民俗学、歴史地理学などの知識を用いて家系を分析する能力を持つように求めています。4は現在の日本では実施されていませんが、将来的には必要になる能力でしょう。
Ancestry.comのサイトを見ると、調査にあたるGenealogist の専門領域が紹介されています。たとえば、アメリカとカナダに移住したイギリス諸島出身者の家系を得意とするとか、ドイツ系アメリカ人が専門、スイス・ハンガリー系移民が得意など、調査者は細かく専門領域をアピールしています。依頼者はこのようなプロフィールをよく読んで、自分のテーマを得意とする専門家に相談することができるシステムになっているのです。
このような調査者の専門領域情報は我が国の代理調査にも必要なものです。
そもそも家族歴史探求というのは、調査する者の専門知識の有無によって調査効率と成果に大きな差が出るものです。たしかな知識を持つ者に頼めば、最も効率よく経費と時間を使って最大限の成果を上げてくれるでしょうし、反対に知識の乏しい者に頼めば非効率的で、無駄の多い調査になってしまう恐れがあります。
Ancestry.comのGenealogistたちのように、 我が国の調査者にも得意分野があるものです。自分が住んでいる〇〇県の図書館や文書館には通いなれているので、所蔵されている文献や記録についても詳しいとか、〇〇地方の村落は自分の家族歴史探求でじっくり調べたので情報を熟知しているとか、〇〇藩の郷士記録については以前調べた経験があるので得意だとか、その調査者の強みとなる分野があるものです。そのような強みがまだ思い当たらないという調査者は、まだ知識が不足しているか、経験が足りないと言わざるを得ません。
しかし、我が国の家系図業者のサイトを見ると、どの業者も全国対応と唱っているだけで、得意な地域や分野をアピールしていません。そのため依頼者は自分の抱えているテーマにマッチした業者を探すことができず、会社の規模やサイトの出来栄えなどで依頼先を決めるしかありません。
ところが、業者側は自社の所在地と依頼者の故地の距離によって、調査に有利不利が生じることを認識しています。
北海道を例にすると、明治20年代に鹿児島県から士族屯田兵として北海道へ移住したという家の場合、調査対象地は鹿児島県と北海道になります。鹿児島県では薩摩藩の記録、また屯田兵に応募するまでの記録を調べることになるでしょう。調査個所は鹿児島市の鹿児島県立図書館、鹿児島県歴史資料センター黎明館、西南戦争に西郷軍として参加していれば長崎市の長崎歴史文化博物館も対象になります。郷士出身であれば、鹿児島県内の故地の現地調査も必要になってくるでしょう。北海道では江別市の北海道立図書館と北海道立文書館、札幌市の北海道大学北方資料室などを調査することになります。
この案件を東京の業者に依頼するのはどうしたものでしょうか。受注した業者はデジタル化されていない文献や記録、電子式コピーが禁止されている文書を閲覧、撮影するため鹿児島県と北海道に出張しなければなりません。その旅費の負担は大きく、人件費もかさみ、戦力の社員が出張することによる通常業務の遅れも生じてしまいます。滞在日数も数日から一週間が限界でしょう。
一方、この調査を鹿児島県と北海道の業者が協働して調査したとしたら、どうでしょう。長距離の交通費も宿泊費もかからず、調査員は通常の業務の合間にスケジュールを調整して施設に何度も通うことができるでしょう。通いなれている施設であれば、資料探しも最短の時間で行うことができるはずです。長距離を移動して現地調査にやって来た調査員は、慣れていない施設や土地に入って、わずか数日間で成果を出さなければなりません。これはたとえプロであっても大変なプレッシャーであり難しい仕事なのです。調査員の能力が同程度であれば、たった数日しか現地に滞在できない調査と何度でも訪問できる調査とでは、後の方が断然有利なことは明白です。
長距離を移動してやって来た調査員が大変有能であったとしても、全国各地の歴史、文化、習慣、資料の残存状況と保管先などを熟知するのは大変なことです。通常は経験を積むことによって全体的な知識は底上げされますが、どこかに特化して専門領域ができるということは少ないでしょう。かたや、ある県の調査を専従で行っている調査員は、経験を積めば積むほど、その県に特化した専門家になるはずです。そのような人材が都道府県ごとに存在し、ビジネスとしての家族歴史探求に従事することは、依頼者にとっても調査の質の向上につながり、受注した業者にとっても効率の良い調査協力者となるでしょう。
これまでも広域で受注している業者は、地元(故地)の行政書士や便利屋に調査の代行を依頼することがありましたが、家族歴史探求の基礎知識のない代理者を使う場合、どの文献の、どの記録の何という箇所のコピーを撮る、写真を撮るということを事細かく指示する必要がありました。それでいて、その指示以上の成果は全く望めなかったため、使い勝手の悪さから自然と頼まなくなり、たとえ経費がかかっても自社の調査員を派遣してきたのです。
いま、求められている地方の調査者は、指示通りに動いてくれる単なる代行者ではなく、家族歴史探求の基礎知識を持ち、かつその地域のスペシャリスト、またはある分野の専門家のような方です。
都道府県に一人以上の専門的な知識を有する調査企業、調査者を育成したいと思います。その方たちが連携して家族歴史の調査、家系図の作成、マーケティングなどを行う家族歴史協働ネットワークを構築します。我が国の家族歴史の普及や発展、家系図ビジネスの製品向上に貢献するところ大である、このネットワークに参加していただける法人、個人の方を募集しています。
応募条件は次の通りです。
・家系図ビジネスに興味のある個人、法人の方。
・参加後一年以内に開業する予定の方。
・すでに家系図ビジネスを展開されている方も歓迎します。戸籍を系図化するだけの製品は広域交付の普及により、今後確実に仕事が減少するでしょう。この機会により専門的な業務を行いませんか。
・趣味で家族歴史を探求している方のご参加はご遠慮ください。そのような方は私の主催しているほかの講座にご参加ください。
一年程度、私が主催するZoom(無料)で基礎知識を修得してもらったあと、実地研修をかねてサンプルの戸籍調査などを行いながら、経験と知識を積み上げてゆきます。
開業後の方針については各自の考えにお任せしますが、協働ネットワークを利用して、故地のメンバーに調査の一部を委託し、協力して家系図を作製してもらえれば理想です。調査は得意だが、営業は苦手という方は、他のメンバーや広域で受注している家系図企業から現地調査などを請け負って地方調査のプロを目指す道もあるでしょう。すでに支社などをお持ちの企業であれば、その組織網をそのまま調査網に利用することもできるため、有利にスタートを切ることができます。都道府県ごとに一社以上のメンバーを確保したいと思っていますので、行政書士など従来家系図ビジネスに参入することが多かった業種に限らず、広く異業種からの新規参入を歓迎します。
ご興味のある方はこちらよりお問い合わせください。