古代豪族と武蔵七党から出た苗字一覧


菅原道真を祀った大宰府天満宮
菅原道真を祀った大宰府天満宮


 四大姓以外の古代豪族から出た苗字と、鎌倉幕府の草創期に大活躍した坂東武者の集団武蔵七党から出た苗字を紹介しましょう。

 ここでは明治を代表する系図学者鈴木真年の遺した興味深い系図を詳細に検討した『古代氏族系譜集成』(宝賀寿男著、古代氏族研究会、1986年)の研究成果を踏まえ、従来の説ではなく宝賀氏の説を参考にした部分があります。


《大伴氏》

 大伴(おおとも)氏は天神高皇霊産尊(かみむすびのみこと)の子孫です。後に伴と改姓し、大納言伴善男(とものよしお)などが有名です。三河国(愛知県)、近江国(滋賀県)で栄えました。代表家紋は「木瓜」です。

(三河伴姓) 大屋・渡・幡豆・富田・宇利・設楽・八名・中条・富永・高松・大原・中井・上田・毛牧・高屋・中上・櫟野・多喜・垂井・関野・小泉・市場・増井・亀井・岩野・岡山・沢田・伊予部・八椚・黒瀬・塩瀬など。

(近江伴姓) 甲賀・平松・大原・山岡など。


《和気氏》

 第9代垂仁天皇の流れをくむ和気清麻呂の子孫です。歴代医家として有名な家系でした。

 和気・半井など。


《坂上氏》

 後漢王朝(古代中国)霊帝の流れをくむ坂上(さかのうえ)田村麻呂将軍の子孫です。代表家紋は奥州一関(岩手県一関市)藩主田村家の「田村車前草(おおばこ)」です。

 坂上・田村・鈴木・土師・高田・廬原・広瀬・山田・井上・村治・安達・土師・武射・匝瑳・沼垂・岡田・石河・足立・村山・倉・庄屋・末呉庭・辻など。


《大蔵氏》

 坂上氏と同じく後漢王朝霊帝の流れをくむ阿知使主(あちのおみ)の子孫です。代表家紋は日向高鍋(宮崎県高鍋町)藩主秋月家の「秋月撫子(なでしこ)」です。

 原田・秋月・泉・別府・新宮・新井・岩門・三原・桑田・砥上・早良・席田・加摩・山田・田尻・亀崎・木原・或水・安永・大屋野・米生・北郷・湯江・海頭・長島・亀川・本砥・天草など。


《秦氏》

 秦(はた)氏は古代中国、秦王朝始皇帝の流れをくむ弓月君(ゆずきのきみ)の子孫です。代表家紋は長宗我部氏の「七つ片喰(かたばみ)」など。

 長宗我部・江村・久礼田・広井・中島・野田・上村・中野・大黒・久富・宍崎・光富・馬場・西和田・蒲原・益田・国沢・戸波・比江山・蓮池・島など。


《惟宗氏》

 惟宗(これむね)氏は秦王朝始皇帝の流れをくむ秦氏の一族にあたります。代表家紋は薩摩藩主島津氏の「島津十文字」です。

 島津・宮里・山田・中沼・阿蘇谷・伊佐・給黎・町田・佐多・新納・樺山・北郷・石坂・河上・樵夫・題橋・桂・迫水・入来院・根占・鎌田・伊集院など。


《日下部氏》

 日下部(くさかべ)氏は第11代開化天皇の皇子彦坐王の子孫です。代表家紋は越前国(福井県)の戦国大名朝倉氏の「三つ盛り木瓜」です。

 柳原・磯部・勢坂・小谷・原・立脇・山口・東・小笛・柏尾・横野・糸井・小泉・日下・三方・三方江・高田・小山・軽部・山本・建屋・広瀬・石和田・太田・稲津など。

(朝倉一族) 朝倉・安居・土田・七美・中野・松尾・向・三段崎・東郷・中島・北庄・鳥羽など。


《清原氏》

 第40代天武天皇の皇子舎人(とねり)親王の子孫です。武家としては豊後(大分県)清原氏が有名です。

 長野・山田・魚返・原田・平井・須立・志津梨・原口・綾垣・飯田・松木・小野・美津・恵良・野上・帆足・大窪・森・岩室・片平田など。


《菅原氏》

 天孫天穂日命(あめのほひのみこと)の流れをくむ野見宿禰(のみのすくね)の子孫で、学問の神様菅原道真が出ました。代表家紋は金沢藩主前田氏の「梅鉢(うめばち)」です。

 柳生・久松・清岡・大隈など。

(公家) 高辻・五条・清岡・桑原・東坊城・唐橋など。

(美作菅家党) 佐用・原田・有元・前田・菅・三穂・有本・寺島・小守・山本・石原・植月・萩野・戸川・広戸・岡本・福光・鷹取など。


《大江氏》

 天孫天穂日命(あめのほひのみこと)の流れをくむ野見宿禰(のみのすくね)の子孫で、菅原氏と同族です。代表家紋は毛利元就の「一文字に三つ星(長門三つ星)」です。

 長井・那波・水谷・芦沢・海東・上田・小沢・古河・左沢・寒河江・岩田・高屋など。

(公家) 北小路

(安芸毛利氏族) 有富・兼重・相合・北・敷名・吉川・小早川・厚母・門田・中馬・平佐・福原・小山・坂・桂・光永・志道・口羽など。


《高階氏》

 高階(たかしな)氏は第40代天武天皇の皇子高市皇子の子孫です。代表家紋は高(こう)氏の使う「七宝に花菱」です。

 高階・高・大高・高野・葦屋・田中・窪田・彦部・四品・小高・大田原・大多和など。


《中原氏》

 天孫饒速日尊(にぎはやひのみこと)の流れをくむ磯城彦(しぎひこ)の子孫です。

(公家) 押小路・平田・志水・山口

(信濃中原氏) 中原・樋口・今井・落合など。


《中原真人姓》

 中原真人(なかはらのまひと)は第40代天武天皇の子孫で、近江国(滋賀県)の豪族です。代表家紋は近江伴姓の影響を受けて「木瓜」を多用しています。

 伊香・井口・分瀬・東・宮部・大橋・生田・土橋北・矢原・菅・尾本・大国・中・西・淵上・所・土橋・泉・平流・大浦・中裂・今村・甲良・田付・田村・青根・金田・福林寺・勢至・松原・小河・小川・長江・中内・蚊野・多賀・熊野・二階堂・浅香など。


《大中臣氏》

 天神天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ、あまのみなかぬしのかみ)の子孫で、藤原朝臣の本家です。長らく皇室の祭祀を独占しました。

(公家) 藤波・吉田・萩原・錦織・藤井


《安倍氏》

 第8代孝元天皇の第一皇子大彦命(おおひこのみこと)の子孫です。代表家紋は「違い鷹の羽」です。

(公家) 土御門・倉橋

(奥州安倍氏) 阿部・阿倍・安倍・安部・安東・安藤・秋田・鳥海・北浦・黒沢尻・黒沢・厨河・藤崎・白鳥など。


《越智氏》

 越智(おち)氏は天孫饒速日尊(にぎはやひのみこと)の子孫で、物部氏の支流です。代表家紋は伊予国(愛媛県)河野氏の「折敷(おしき)に三文字」です。

 越智・寺町・北条・石崎・久万・河野・高井・浮穴・白石・田窪・遠藤・滝口・垣生・浅海・難波・大内・久枝・福角・日向・対馬・村上・桑原・得能・別府・土居・稲葉・重見・平岡・一柳・林・久留島など。


《紀氏》

 第8代孝元天皇のひ孫武内宿禰(たけしうちのすくね)の子孫です。武士団の紀党(きとう)を結成しました。大名の堀田氏は「木瓜」紋を使っています。

 浦上・安富・細見など。

(下野紀党) 芳賀・堀田・益子・池田・榎下・高幡・高井・佳田・中村・井坂・春日部・潮田・大井・堤など。


《多々良氏》

 多々良(たたら)氏は古くから百済国王(くだら。古代朝鮮半島の国)の王子である琳聖太子(りんしょうたいし)の末裔と称していますが、実は任那国王(みまな。古代朝鮮半島の国)の子孫とも言われています。代表家紋は戦国大名大内氏の「大内菱」です。

 大内・陶・山口・小幡・馬場・冷泉・柿並・高名・氷上・波野・問田・矢田・末武・黒川・平野・江木・鰐石・仁戸田・得地・野田・鷲頭・吉敷・益城・右田・来原・宇野など。


《小野氏》

 第5代孝昭天皇の子孫で、代表家紋は「万字」です。 

 森本・安福・片山・野・石田・肥後など。


《大宅氏》

 大宅(おおやけ)氏は第5代孝昭天皇の子孫で、代表家紋は高橋氏の「竹に笠」です。

 高橋・油比・西山など。


《諏訪神党》

 初代神武天皇の流れをくむ金刺(かなさし)姓です。信濃国(長野県)の一之宮諏訪神社の上社の大祝(おおほうり)家。後に武士団を形成。代表家紋は諏訪神社の神紋でもある「立ち梶の葉」。

  諏訪・有賀・花岡・平出・矢ヶ崎・知久・福島・桑原・安部・保坂・高遠・元沢・原・宮処・小坂・春日・浦野・大塩・中島・宮下・金山・桑原・宮川・小田切・中尾・下平・沖・片倉・関屋・深沢・皆野・三塚・若尾・四宮・沢・岩波・高木・浜・横田・平林・保科・神原・笠原・宮崎・海口・中島・中沢・千野・茅野・松島・藤沢・座光寺・栗原・上原・矢崎・栗沢・向山・中野・桜山・西保・真野・肥間・桑原・福島・若尾・平島・平方・遠山・薗屋・大妻・風間・小島など。


《豊後大神氏》

 大神(おおが)氏は天照大神の弟素戔嗚尊(すさのおのみこと)の子孫です。大和国(奈良県)から豊後国(大分県)に下向して武士団を形成しました。代表家紋は緒方氏の「三本杉」です。

 大神・高千穂・高知尾・阿南・四穂田・野尻・佐伯・直入・城原・朽原・三田井・立宿・田原・芝原・波来合・松尾・早稲田・畠田・甲斐田・野方・小原・大津留・武宮・橋爪・稙田・野津原・麦生・大野・敷戸・大牟田・田尻・由布・安藤・田吹・入倉・十時・柴山・臼杵・三重・大藤・日高・戸次・上野・堅田・賀来・高畑・緒方・緒形・大賀・沼田・高野・清田・荒木・近藤・細野・藤林・竃江・野尾・竹屋・田北・田上・金子・児島など。


武蔵七党

 武蔵国(東京都・埼玉・神奈川県)発祥の武士団を「武蔵七党」と言いますが、実は九党ありました。


《横山党》

 第5代孝昭天皇の流れをくむ小野篁(おののたかむら)の子孫です。代表家紋は「左万字」。

 横山・荻野・山口・海老名・椚田・野内・平子・石川・田名・小野・糟屋・由木・室伏・大串・千与野・伊平・藍原・古郡・小倉・野部・山崎・菅生・大貫など。


《猪俣党》

 第5代孝昭天皇の流れをくむ小野篁(おののたかむら)の子孫です。横山党とは同族です。

 猪俣・猪股・野部・木里・尾園・男衾・人見・河勾・甘糟・荏原・藤田・内島・岡部など。


《野与党》

 桓武平氏の流れをくむ平忠常の子孫です。

 野与・多名・鬼窪・萱間・多賀谷・高柳・大蔵・渋江・南鬼窪・箕勾・柏崎・須久毛・八条など。


《村山党》

 桓武平氏の流れをくむ平忠常の子孫で、野与党と同族です。

 村山・大井・宮寺・金子・難波田・仙波・山口・荒幡・横山・広屋・須黒・久米など。


《児玉党》

 天孫饒速日尊(にぎはやひのみこと)の流れをくむ有道宿禰(ありみちのすくね)長道の子孫です。代表家紋は児玉氏の「唐団扇(からうちわ)」です。

 児玉・庄・本庄・塩谷・富田・四方田・小河原・蛭河・阿佐美・小中山・入西・浅羽・大河原・小代・越生・小見野・栗生田・山越・黒岩・岡崎・山名・島名・多子・与島・竹沢・秩父・新屋・稲島・大類・大浜・鳥方・白倉・片山・小幡・奥平・大淵・倉賀野など。


《西党》

 天孫天穂日命(あめのほひのみこと)の流れをくむ他田日奉直(おさだのひまつりのあたえ)春岳の子孫です。代表家紋は「九枚笹」です。

 西・長沼・由木・・川口・田口・西宮・信乃・上田・小川・二宮・駄所・田村・立川・稲毛・狛江・平目・清恒・平山・由井など。


《丹党》

 天神神皇産霊尊(かんみむすひのみこと)の流れをくむ大丹生直(おおにゅうのあたえ)の子孫です。代表家紋は黒田氏の「黒田桝に月」です。

 桑名・竹淵・塩屋・横脛・横瀬・弥郡・古郡・大河原・中村・岡田・下中村・小鹿野・坂田・大窪・栗毛・薄・織原・秩父・勅旨河原・南荒居・青木・榛沢・新里・由良・安保・長浜・高麗・加治・丹・小島・志水・白鳥・岩田・藤矢淵・野上・井戸・葉栗など。


《私市党》

 私市(きさい)党は天孫天穂日命(あめのほひのみこと)の流れをくむ千葉国造(ちばのくにのみやつこ)である大私部直(おおきさいべのあたえ)善人の子孫です。

 私市・久下・須賀・成木・熊谷・河原・肥塚・楊井・市田・太田・小沢など。


《綴党》

 綴(つづき)党は藤原利仁将軍の流れをくむ斎藤氏の一族です。

 都筑・続・綴喜など。