椎名姓の由来

2019年10月18日

 歌手の椎名林檎 さんの椎名という苗字は使用人数が約2万9000人で、関東に多く、とくに千葉県に密集している。
 地名発祥の苗字である。下総国千葉郡(千葉市緑区椎名崎町)、同海上郡(旭市椎名内)の椎名地名が有名で、そこから第50代桓武天皇(737~806)の流れをくむ桓武平氏千葉氏族の子孫という椎名氏が生まれた。『千葉系図』に「上総介(千葉)常重ー胤光(椎名五郎)」と見える。九曜紋を好んで使う。中世には一族は越中国(富山県)に移って新川郡の守護代となったが、元亀4(1573)年、上杉謙信に攻められて追われた。

九曜
九曜

 椎名という言葉の語源は何だろうか。椎の木に由来すると思われるかも知れないが、その事例は極めて少ない。九州、とくに宮崎県には椎原、椎葉のような地名があり、いずれも険しい崖や浸食された谷に付けられている。一方、関東の椎名地名は堤防や砂地に付けられている。千葉市の椎名崎は村田川下流の台地にあり、旭市の椎名内は九十九里浜に面している。上は「しひ(しふの連用形)+名(接尾辞・場所)」、下は「しな(階)」が長音化したものかも知れない。

 岩手県水沢市の出身で自民党副総裁を務めた椎名悦三郎は後藤新平伯爵や高野長英の親戚にあたり、丸に違い鷹の羽紋を使用している。小説家の椎名麟三はペンネームで、本名は大坪昇という。