明治初期の村絵図について

2019年12月05日


 私はこれまで多くの方に先祖調査の方法をお教えしてきましたが、戸籍調査が完了した後は、土地関連の調査に進むことをお勧めしています。
 

 戸籍からではご先祖の暮らしぶりを想像することは難しいですが、土地調査によってご先祖の資産状況が分かると、生活の様子が想像できるようになります。多くの土地を所有していたのであれば、地主のような暮らしをしていたでしょうし、借地に住んでいれば小作人として貧しい暮らしをしていたかも知れません。この場合、ご先祖が豊かだったか、貧しかったかはどうでも良いことです。それよりも知りたいのは、ご先祖がどのような暮らしをしていたかということです。
 

 そこで、まずは明治22(1889)年からの土地の所有者を記載している旧土地台帳を取得することをお勧めします。旧土地台帳を見ると、明治中期から昭和初期までのご先祖の所有地がどこにあって、広さはどれくらいで、それが何に使われ(宅地や農地など)、不動産価格がいくらで、年間にどれくらいの地租(固定資産税)を支払っていたかが全て判明します。もしも、ご先祖が本籍地を置いていた土地が借地であった場合は、その土地の持ち主が誰で、持ち主がどこに住んでいた人かも分かります。この旧土地台帳は全国の法務局に保管されており、無料で、どこの土地のものでも郵便で入手することができます。

 もっと古い記録もあります。それは「壬申地券地引絵図」(「地券取調総絵図」とも言います)といわれるものです。これは明治5(1872)年の地租改正で納税形態が米納から金納に変更された際、政府から発行された地券(土地の所有権を示す証券)を補完する目的で作られた村の絵図です。
 600分の1の縮尺で作られたため、広げると縦横数メートルもある大きな地図で、屋敷、田んぼ、道、山、川などはそれぞれ別の色で美しく彩色されています。個々の村人の所有地が線で囲われているため、一つ一つの土地の形状がよく分かり、地積(広さ)、地目(用途。水田や畑など)、所有者の名前も記されています。

 

 作成当時の政府の通達を確認すると、「壬申地券地引絵図」は2部作成され、1部は県庁に保管され、1部は村役場に備え付けましたことが分かります。このうち県庁にあった分は現在、図書館や公文書館に移管されている場合があります。村にあった分は役場、公民館(自治会館)などに所蔵されている可能性があります。どこにあるかは、教育委員会に問い合わせてみるといいでしょう。市町村史を編さんする際には、教育委員会に編さん室を設置することになっていますから、地元の古い記録の情報は教育委員会に集まりやすいからです。