寄留簿について

2019年12月02日


 寄留簿 とは、本籍地を移動せずに人が転居した場合、その実態を把握するために役場で作製したものです。流入者は「入寄留簿」につづり、流出者は「出寄留簿」につづりました。明治19(1886)年の戸籍法改正によって役場に備え付けられるようになり、大正3(1914)年には「寄留法」も成立しました。これにより90日以上本籍地以外の市町村に寄留するときには、10日以内に届けなければ5円以下の過料を払わなければならなくなりました。


 有名な寄留簿としては、月形町の行刑資料館に展示されている 杉村義衛(永倉新八)のものがあります。これは月形町にあった樺戸集治監の文書群から発見されたもので、当時小樽に本籍地を置いていた元新撰組二番組長・永倉新八が杉村義衛と改名し、明治15(1882)年から4年間、樺戸集治監(刑務所)の剣術師範として看守に剣術を教えていたときのものです。様式は明治19年式戸籍に準じていました。


 寄留簿は戸籍を補う存在として先祖調査には大変に役立つものですが、残念ながらほとんど現存は確認されていません。通常、保管されている先は旧村役場文書を引き継いだ公文書館などですから、ご先祖の住んでいた村の文書がどこかの公文書館、文書センターなどに移管されていると分かった時には、ぜひ問い合わせてみると良いでしょう。もしも発見されれば、家族の歴史を復元する上で一級史料となるものです。