先祖が自分に与えている影響について考える

2019年09月10日


 家系図を作ると、そこに記されているご先祖と自分の関係が気になるものです。単に血でつながっているだけなのか、それとも生きる上でもっと深い影響を具体的に何か受けているのか。それを科学的に探る方法が実は三つあるのです。


 一つは精神科医マレー・ボーエン(Murray Bowen)の家族療法(システム家族論)でよく用いられるジェネグラム(心理的家系図。genogram)です。これは臨床心理学のカウンセリングに家系図を使うもので、依存症などの原因を先祖の中から探り出す手法としてよく知られています。

 フランス・ニース大学の心理学者アン・アンセリン・シュッツェンベルガー(Anne Ancelin Schutzenberger)は、『The Ancestor Syndrome: Transgenerational Psychotherapy and the Hidden Links in the Family Tree 1st Edition, Kindle Edition』の中で、ジェノグラムよりもさらに詳細な内容で、世代も6~9世代に広げたジェノソシオグラム(genosociograms)という家系図を使って、両親、祖父母、叔母、叔母などの先祖が解決できなかった問題(ストレス)が、世代を超えて子孫である我々に受け継がれることを豊富な臨床例を通じて紹介しました。

 先祖の喜びや苦しみ、職業、姓名、日付、妊娠、出生、流産、中絶、結婚、依存、死、自殺...これらが実は我々に強い影響を与え、無意識のうちに反復されているという研究は、心理系図学(Psychogenealogy)と呼ばれています。

 

 第二はエピジェネティクス(後成遺伝学。epigenetics)です。これは生物化学や医学の分野で、先祖の生活環境や食生活が遺伝子の発現(遺伝情報に基づくタンパク質の合成)をうながし、子孫の我々に強い影響を与えているという研究です。とくに妊婦が胎児に与える影響は強く、数世代にわたって生活習慣病や精神疾患として現れることが報告されています。


 第三は臨床遺伝医学(Clinical genetic medicine)です。これは患者の家系図を作成して、それを参考にして正確な遺伝学的診断を得ようというもので、今後、遺伝子治療が普及するにつれて、ますます重要度が増してくる家系図の利用方法でしょう。


 いずれの研究についても専門書が数多く出ているので、ご先祖が自分に与える影響について詳しく知りたい方は一読をお勧めします。