ファミリーヒストリーの調べ方 『帝国銀行会社要録』

2018年12月15日


 ファミリーヒストリーを調べるうえで、ご先祖の経営していた会社や勤務していた会社が分かれば、大きな手掛かりになる。大企業で現在でも存続していれば、古い人事記録を持っているかも知れない。会社を経営していたのであれば調べる方法はいろいろとある。

 もっとも手軽なのは大正元年(1912)に帝国興信所(現在の帝国データーバンク)が刊行した『帝国銀行会社要録』を見ることだろう。これを見ると商号・屋号、住所、電話番号、目的、設立年月、資本金、株数、役員名が分かる。ご先祖が会社の経営者か役員であれば、こに記載されているだろう。

 国立国会図書館デジタルコレクションでは、大正元年の第1版から昭和18年(1943)の第31版までをネットで見ることができる。『帝国銀行会社要録』第31版を見ると、昭和18年(1943)5月末日の時点で日本帝国とその領域に存在する銀行すべてと、資本金18万円以上の会社が網羅され、これらが都道府県別に掲載されている。デジタルコレクションのコマ数が712あるので、実際のページ数はその倍、1,400ページを超えている。

 大阪府の部には、一代でパナソニックを築き上げ、経営の神様と言われた松下幸之助の松下電器産業(株)も次のように掲載されている。(長)は社長、(専)は専務、(常)は常務、(締)は取締役、(監)は監査役の略号であり、旧漢字は新字体に変換した。


松下電器産業株式会社 北河内郡門真町門真 

 目的 電気機械器具製作販売並各種事業投資

 設立 昭和十年十二月 総株数二十万株 決算期五月 十一月

 資本金(払込済) 10,000,000

 (長)松下 幸之助

 (専)井植 逞蔵 (常)亀山 武雄

 (締)谷村 博蔵 高橋 荒太郎

 (監)石井 政一 中尾 哲二郎

 大株主(株主数三百六十三名)

 松下 幸之助 121,235株

 井植 逞雄   15,000株

 亀山 武雄   10,000株

 野村信託株式会社 5,000株

 野村生命保険株式会社 5,000株

 京城出張所 京城府岡崎町二

 豊崎工場 大淀区豊崎東通


 松下幸之助の会社は、ほかに松下乾電池株式会社(社長)、松下金属株式会社(社長)、松下航空工業株式会社(社長は亀山武男。松下は取締役)、松下鉱業株式会社(社長)、松下電気工業株式会社(社長は入江正太郎、松下は取締役)、松下電器貿易株式会社(社長)、松下無線株式会社(社長は井植逞雄、松下は取締役)が掲載されている。